猫背
白い車の黒髪の背の高い女性と小さな男の子
狭い店の中をあっちへこっちへ
いろんなものを触る
たくさんしゃべる
言葉が次から次に出るのだろう
その男の子の名前をさん付けで呼ぶ女性
すみません
すみません
なんども頭も下げながら男の子の手を強く握っている
放すと無くなってしまうかのように強く
すみませんと言って会計を済ませ店を出る
車に戻りチャイルドシートに乗るのを嫌がる男の子
その風景が低い窓から見える
月に一度何年も何年も続く風景
昨日ふたりがやってきた
こんにちは
すこし大きくなった男の子が挨拶をする
行儀よく椅子に座る
女の人が買い物をする間じっと座っている
膝と膝をきちんと合わせて
会計をすませると男の子は紙袋を持ってさようならと言ってドアのほうへ
上気した桃色の頬で胸をはる男の子
すみませんと一度も言わなかった女性
すこし猫背気味
口元を強く結んだ横顔はいつもより下を向いていた
ような気がした