空港で止まる夢をよくみる男の話

 昨夜、どうやら家族で韓国へ向かうため空港に着いたのだけれど、予約している便の搭乗に間に合わないようで、ただただ私が右往左往している夢をみた。

 

 旅行の計画を立てたり各種の予約は、家庭での私がやる数少ない仕事。それなのになぜか今回はすべて妻が計画から手配までやってくれていた。空港へむかう車の中で「航空券持ってる?」とか「パスポート忘れてきてるってオチはないよね」など、軽口をたたいていたくらい、どうやら今回の旅行が楽しみのご様子のわたくし。空港に到着し、航空会社のカウンターに手続きに行こうと妻からチケットを預かりなにげなく券面を見ると、あれ、出発時刻過ぎてない?と一瞬固まる。気を取り直して2度見したのだけれど、搭乗予定の航空機は数十分前に空に舞い上がったであろう事実は変わらなかった。

 次の便に振り替えれないかしら?無理ですねえ、ディスカウントチケットなので。そうですよねえ。と、航空会社の係員とのやりとり。どうにかならないの、あんた旅行会社で10年働いてたんだろ、って目で見る妻と娘と息子。うーん、考えろ考えろ。って、あれ、オレが間違ったんじゃないよね、って、そんなこと言ってる場合じゃない。終わったことより未来のこと。韓国に行くんだ!現実と違って夢の中では変に前向きなわたくし。とりあえず腹が減ったからレストランでも入ろうよ。家族を諫めながら(なぜだ!)とりあえずビールを頼むわたくし。うーん、どうしたものか。うーん。アガシ、メッチュー。唯一知っているハングル語。

 と、そこで目が覚めた。

 

 タクシーの後部座席で運転手さんを急がすオレ。時間がないんですよ、がんばってください!って、どう考えても自分勝手な要求をするオレ。どうやら出発時刻ギリギリのご様子。しぶしぶながらもアクセルを強めに踏んでくれる運転手さん。サンキュー。なぜか針葉樹の木立の中を猛スピードで疾走する一台のタクシー。こんなとこに空港があるんだろうか?と俯瞰で見るわたくし(このわたくしはタクシーの後部座席に乗ってあ自分の遅れを取り戻すため運転手さんにスピード違反を教唆するような卑劣で自己中心的なオレではない)。見えた!(これは俯瞰しているわたくしではなくオレのほう)ガラス張りの正方体の空港らしきものが前方に見える。見えたからもうすぐだ、って安堵したけれど、いつまでたっても空港にたどり着かない。ぐるぐる木立の中を走るタクシー。そこに見えてるのに。なぜだ、なぜ。。。

 

 走れー!出国検査を通過してから搭乗口までが異常に遠い通路をひたすら走る。歩行者用のエスカレーターになっていたり、2段だけ階段があったりと、なぜか途中でエレベーターに乗ったりしながら、私だけじゃなく何人か一緒に走る。併走する人たちは誰かもわからないけれど、たぶん同じユナイテッドの便に乗る人たちなんだろう。行き先もわからないけれど、ただただ全力で走る走る走る。

 

 どこの空港かはわからないけれど、いつも同じ空港。森の中にあるガラス張りの四角い外からみるとそんなに大きくないんだけれど、中はとても広い、いや、広いっていうよりは図面で表せないような感じの空港。

 そんな空港でいつもどこにも行けず、飛行機にさえ乗れないで、途方にくれたり、のんきにビールを飲んだり、怒ったり、笑っていたりするオレ。そして、そのオレを俯瞰で見ているわたくし。

 いつかこのオレは飛行機に乗れるのかしら?そしてそのとき、わたくしは何を思うのだろう?